大久保 京 書肆 吾輩堂 店主『毎日が猫の日』 \シェアする/ 書肆 吾輩堂について 福岡市中央区六本松という街の中心地からほど近いエリアに、多くの細い路地がある昭和へタイムスリップしたような一角があります。 そして、そこの路地の奥まった場所に「書肆 吾輩堂」という、おそらく日本で最初の「猫本だけ」の本屋さんがあります。 中に足を踏み入れると、素敵な小倉織のテキスタイルを貼った壁面が現れ、その心地良い空間にまず軽く驚きます。 そして目線を、九州大学箱崎キャンパスにて、長い年月に渡って使われてきた味のある重厚な本棚に移すと、そこには新旧様々な猫本が行儀良く並べられています。眺めていると、思わず心の中で笑みが溢れます。 2Fには猫の雑貨が並べられており、猫好きの心をいろんな角度から鷲掴みにする魅惑のお店となっています。お酒が好きな店主の趣味が高じて、店内でクラフトビールやワインを飲むこともできます。 「書肆 吾輩堂」は、猫が大好きな店主のこだわりが詰まった、何度でも訪れたくなる猫好きのためのお店です。 店舗情報 お店の名前書肆 吾輩堂お問い合わせ092-791-1880Mail Addressnekohon [at] wagahaido.com営業時間11-18時定休日月・木、年末年始Address福岡県福岡市六本松1-3-13DAY’S CUP caféさんの角から細い路地に入って6軒目です 大久保 京の自己紹介 「男の子になりたかった」 子供時代父は勤務医、母は専業主婦の家庭に育ちました。 今でもよく覚えているのは、大人によく「長女なんだから弟妹の面倒を見なさい」とか「女のくせにわがままだ」とか怒られていたことです。 これがしたい、あれがしたい、これは間違っているなどと子供ながらに自己主張がしっかりした子供だったからだと思いますが、何がいけないのか子供の私には全くわかりませんでした。 当時CMで「わんぱくでもいい。たくましく育ってほしい」というキャッチフレーズが流行っていたのだけど、確か丸大ハムだったと思います、どうして男の子だけそうなんだろう、なぜ女の子はダメなんだろうっていつもこのCMを見るたるたびに不思議に思っていました。 小学校低学年の頃、大人になったら何になりたいか書きなさいってお題の作文があったんですけど、私、迷うことなく「男になりたい」って書いたんですよ(笑)。 でも今は女でよかったな、って私は思っています。 だって命を生み出せるのは女性だけだし、女性の方が色んなことが自由に出来るような気がするんですよね。 本がずっと好きだった。 話は戻って、私の家は厳格な家庭だったので、子供の頃、家でTVは基本禁止でした。大丈夫だったのは、「野生の王国」と映画だけ(笑)。映画は家族全員好きだったので。だから、学校では話が合わなくて苦労しました。 でもその代わりって訳でもないんだろうけど、両親は本を惜しみなく与えてくれたし、私が読みたい本はなんでも買ってくれました。いつも本を読んでいた様な気がします。 よく覚えているのは、父から買ってくれた岩波書店の『千一夜物語』大人向けの完訳版です。いわゆる子供向けの童話ではありません。バクダッドが舞台の話なのですが、とんでもないエロ話も登場して、よく父親はこんな本、娘に渡すなって思ったりもしたのですが、この本をきっかけにイスラム美術、特にモスクやタイルが大好きになりました。 四半世紀温めた「猫本だけの書店」のアイデア 大学を出て、旅行代理店で数年働いたのち、1993年に北九州市立美術館の学芸員に転職しました。このタイミングでようやく生まれて初めて猫を飼うことが出来ました。それまでもずっーと猫を飼いたかったんですが、曾祖母、祖母に父親の3人が猫嫌いで実家では飼えなかったんですよね。念願叶って、猫と暮らし始めると本当に楽しくて嬉しくて、そのうち堪らなく猫の本が読みたくなったんです。でも、当時はネットも発達していない時代で、本屋や図書館に猫の本を探しに行くんですが、結構な手間暇がかかり苦労しました。そこで「いつか猫の本だけを扱うお店をやりたい」って夢を持つ様になったんです。時は流れて、2011年。 学芸員を経て北九州のアート系NPOで働いていた私はそちらを退職して、吾輩堂の準備に取り掛かりました。本はずっと好きでしたが、売ったことなんてないから、今思えば全てが手探りでした。 まず何より猫についての本を集めるのが大変で、人に聞いたり古書組合に入ったりして情報収集をしたのですが、決まって、古書組合のおじさま達からは「猫の本だけの店なんて無理だから、辞めときな。他の動物や美術本も扱った方が良いよ。」といった具合のアドバイスをよく受けました。 私は、でもむしろ素人の私がやるからこそ、猫本に特化した書店の方がいいんじゃないかと思って、予定通り2013年2月22日の「猫の日」にオンラインで『書肆 吾輩堂』をスタートさせました。 猫本の店をオープン。反響の大きさに驚く。 結果ですが、大正解で、すぐに大きな反響があってびっくりしました。数日でネットニュースや新聞に取り上げてもらって、4月、5月には本を出しませんかって話まで舞い込んで、実際に本も出版しちゃいました(『猫本屋はじめました』洋泉社刊)。 その後、ずっと実店舗を持ちたくて不動産も探していたのですがピンと来るものが見つかりませんでした。ざわざわしている天神や大名みたいな場所って違う様な気がしたんです。でも2018年にようやくしっくり来るこの場所と巡り合って、良い関係者にも恵まれて念願の実店舗をようやくオープンさせることが出来ました。結局、実現するのに25年間掛かっちゃいましたが、旅行代理店や学芸員の仕事など今までの経験が全て「吾輩堂」に繋がっているなって、今では思っています。 後悔するのが嫌。諦めない。 この2つが私の流儀です。強く思っていたら実現するんですよね。でも、なんでこんなに私逞しくなったんだろう?昔はこんなにズカズカやれてなかったんですよね。『なんでだろう?』思い返すと、子供を2人産んで育てることで、覚悟や強さが出来たような気がします。あっそれと、あまり話したことないんですけど、周りの知人が3人ほどそこそこ若くして亡くなってるんですよ。それで私、若い頃からけっこう真剣に『死』を意識するようになって、死んだら元も子もないんだから、人生悔いのないように必死に生きようって強く思ったことが原点なのかもしれません。これからの「我輩堂」についてですが、学芸員の頃やっていたように、いろんな猫にまつわるアーティストの人たちに光を当てていきたいな、と思っています。皆様の来店を心よりお待ちしてます。 大久保 京の趣味 猫 これまで5匹飼っていて、亡くなった初代店長のゴンチャロフ以外は今も皆元気です。 ①ゴンチャロフ(享年19歳 ♂) ②もじゃ(13歳 ♂) ③チーチー(9歳 ♂)④チロ(6歳 唯一の♀)⑤飛梅太(3歳 ♂) 旅をすること。海外旅行は色々と行っている方だと思いますが、特にトルコが好きですね。首都のイスタンブールは特に東洋と西洋が混じってごちゃごちゃな感じが好きですね。 それと古い歴史を持っていることもポイントで、昔はギリシャの植民地だったこともあるんですよ。 トルコというかイスラムのタイルやテキスタイルの意匠全般も好きですね。 お茶5年ほどやっています。全然まだまだでライフワークだと思っています。お茶の非日常感が好きで、お茶を入れていると他のことを全部忘れて没頭できます。 和歌2ヶ月に一度、京都の冷泉家に和歌を習いにいっています。実は5匹目の猫トビウメタは京都の冷泉家の床下で生まれた野良猫をもらい受けたものです。トビウメタという名前も、実は和歌の先生である冷泉貴実子先生につけてもらいました。 大久保 京のHistory 1974小学校低学年の頃、「大人になったら何になりたいか」をお題に作文を書くことになり、「男になりたい」と書く。1984西南学院大学文学部 国際文化学科に入学。イタリアルネッサンス期の美術史を中心に学ぶ。1988ユーラシア旅行社に就職。「イスラム文化に興味がある」という面接時の一言から、中東方面のツアーコンダクターに抜擢される。仕事で、シリア、ヨルダン、イラン等のイスラム諸国を旅する。1993北九州市立美術館の学芸員に転職。この年念願叶って初めて猫を飼う。この時、猫についての本が読みたくなったのだけれどネットなんてない時代。図書館や本屋に行って猫本を探すのが大変で、いつか猫の本だけの店を出したいと思うようになった。1997結婚。2000長男出産2001長女出産2003北九州市立大学美術館分館のスターティングメンバーとして誘われ、仕事に復帰。福岡市内から北九州市に通勤する日々がスタートする。20132月22日の『猫の日』に我輩堂オープン。2018六本松護国神社近くの路地に吾輩堂実店舗オープン