僕は試験と名のつくものが大抵苦手で、実は高校入試も志望校に落ちて一浪しました。大学受験も一浪したのですが実際には全く勉強せず、ファッション雑誌を読んで、好きな音楽を聴いてジャズ喫茶に通う生活を送っていたため親に勘当されました。
クリエイティブな仕事に興味があったのでデザイナーや建築家にも憧れたのですが、どうやったらなれるのか僕には皆目見当がつかず、結局美容師になることを選びました。
今でこそ男性の美容師は当たり前ですが、昭和 40 年代の当時は、男性が美容師になることは本当に稀な時代でした。
当時母が通っていた美容室を紹介してもらってそこの見習いとして僕の美容師のキャリアはどうにかスタートしました。その美容室で足掛け 5 年間、美容師になるための修行をしましたが最初は本当に苦労しました。
クリエイティブなことをしたいと思って美容師の道に入ったのに実際は店の掃除をしてお客さんのシャンプーをするだけの日々が一年くらい続きました。
でも店を居心地よくしたいと思って、有線で好きな音楽をかけたり、油絵で店の看板を書いてみたり、地元の魅力的な人を取材してミニコミ誌を作ったりしているうちに、いつの間にか僕を指名してくれるお客さんが増えていったような気がします。